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再建が軌道に乗れば株価の上昇も見込め、社債権者の損出を少しでも抑えることができる自信のスキームだった。
Y堂側はSが破綻した場合にジャンク債も本当の紙くずになるため、社債権者の合意は取り付けられると見ていた。
Y堂側はアドバイザーとして米証券大手のM、SはS証券を指名した。
当時、M地所によるL買収など日本企業による米企業の買収が相次いでおり、米国内では日本企業に対する脅威論など感情的な批判も目立っていた。
Y堂側はあくまで救済型の企業買収であったが、米国の証券・資本市場に精通しているMを、一方、Sは日本の流通企業のM&A(企業の合併・買収)を多く手がけ日本企業の意思決定過程を熟知するSに白羽の矢を立てたのである。
Y堂側がMを指名したのは、同社副会長の守屋寿がいたことが大きな決め手となった。
守屋はN証券出身でY堂が77年に初めて米国で転換社債(CB)を発行した時の担当者。
それ以来、守屋がN証券を離れ米国証券会社を渡り歩いている時も親交を深めていた。
しかし、万難を排したはずの「条件付き」支援策は二度の修正を余儀なくされた。
社債権者がY堂側の条件に難色を示したからだ。
社債の価値が約3分の1に目減りすることや、経営責任を取らなくてはならないトンプソン一族が大株主として残ることに強い不満を表明した。
この混乱期に企業買収家として有名なカールーアイカーンが13.5%の社債を大量に保有(社債全体の約35%)し、Y堂側に揺さぶりを掛けてきた。
「S社が破綻するよりも、この条件のほうが社債権者にとって有利な条件なのになぜ、同意しないのか」と、苛立ちを抑えきれないY堂グループ首脳もいた。
事態打開のためにY堂側はトンプソン一族の保有株比率を当初の15%から6.5%に引き下げ、逆に社債権者の保有株比率を10%から18.5%に引き上げて交渉の決着を図ろうと試みたが、やはり95%を超える社債権者の同意を取り付けることはできなかった。
ただ約60%の社債権者が同意の意思を見せていたから、光明はおぼろげながら見えてきていた。
Y堂側は9月末、ウルトラCに打って出る。
破綻を前提にした事業計画案を作成し米証券取引委員会(SEC)に提出し承認を得て、社債権者の元本総額の3分の2以上、社債権者の過半数の合意を事前に取り付けてから、米破産裁判所に日本の民事再生法にあたる米国破産法2条(チャプターイレブン)を申請して破綻させる大技だった。
この手法は「プリパケージド・オーガニゼーション・プラン」と呼ばれ、一種の「条件付き倒産」である。
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